センター長ご挨拶(2022年~現在  山口英幸)

2022年4月1日付けでJSPS北京研究連絡センターのセンター長に就任致しました山口英幸です。1987年にJSPSにおいてアジア諸国との協力事業に従事して以来今日まで、主に学術の国際交流に携わってまいりました。北京には、2003年から3年間に渡り当センター設立のために駐在しております。日中国交正常化50周年という節目の年にこのような形で再びセンターに戻ってきたことに感慨深い思いを抱くとともに、センターをここまで発展させてきた歴代のセンター長のご尽力に改めて敬意を表したいと思う次第です。

JSPSは、昭和天皇の御下賜金をもとに1932年に創設されました。それから90年という月日が経ちましたが、今日では研究者の自由な発想に基づく学術研究を支援する日本で唯一の資金配分機関として、学術研究の助成、研究者の養成、大学改革や大学のグローバル化の支援、そして学術に関する国際交流の促進など多岐にわたる事業を行っております。

中国とも、1979年に中国科学院と研究者交流を開始したのを皮切りに、40年以上に渡り日中間の研究者のモビリティーを高めるための様々な事業を展開してまいりました。その結果、今日ではJSPSの事業により支援された経験のある研究者は、中国全土に広がっております。これらの研究者は、JSPSの貴重な財産ともいえますし、日本と中国をつなぐかけがえのない存在であるともいえます。そういった個々の研究者が、JSPS中国同窓会を結成し、組織的、継続的に活動していることは意義深いことであり、当センターとしても密接に連携して日中間の研究者ネットワークの形成・維持・強化を図ってまいりたいと考えております。

また、今日多くの日本の大学が中国に拠点を設置しておりますが、北京研究連絡センターは、そういった大学の連絡会である「希平会」の事務局も勤めております。この希平会には、現在27大学、1研究所と、それらを支援する5つの政府系機関が参加しております。さらに、中国国内の大学や他の公的研究機関で研究に従事する在中の日本人研究者同士のネットワーク構築にも取り組んでおり、「在中国日本人研究者ネットワークさろん (Network Salon)」を開催し、情報交換のための場を提供しております。

さて、私が前回中国に駐在してから20年近くが経ちましたが、その間に中国は世界でも屈指の科学技術大国となりました。日本も研究力の低迷が指摘されて久しくなっているものの、近年でもコンスタントにノーベル賞受賞者を輩出するなど様々な分野で世界の第一線に立ち続けております。アカデミズムの世界はグローバルに開かれたものであり、東アジアで隣り合う優れた研究者たちが力を携えることによりもたらされる成果は、人類全体の福祉にもより大きな恩恵をもたらしていくものといえましょう。

一方で、ここ数年に渡るコロナ感染症の流行や絶え間ない紛争により、国際社会を取り巻く環境はかつてなく厳しい状況が続いております。日中関係も、近年は浮き沈みが続き先が見通せないままとなっております。しかし、このような時だからこそ、現場での地道で着実な交流を継続していくことの重要性が高まっているとも言えます。これから築かれようとしている新たなる日中関係の発展に貢献すべく、センターのスタッフ一同で日中交流の最前線で活躍している研究者を支援していく所存ですので、皆様からの変わらぬご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。

 
 
日本学術振興会北京研究連絡センター
センター長 山口 英幸
2022年4月
 
  歴代センター長