「農村発展転換期における農業協同組合-日中の比較と検討」
2017年8月23日(水)、中国社会科学院(CASS)において、CASSとの共催で、国際学術シンポジウム「農村発展転換期における農業協同組合-日中の比較と検討」を開催しました。
このシンポジウムは、日中間の社会科学分野における研究交流を促進する目的で2012年から毎年開催しており、今年で通算6回目になります。今回は約100名の参加者を集めました。
閆坤 CASS農村発展研究所副所長の司会進行により開幕式が執り行われ、中国側から周雲帆 CASS国際合作局副局長および魏後凱 CASS農村発展研究所長が、日本側からは廣田薫 北京研究連絡センター長が代表して挨拶しました。
今回のシンポジウムでは、「日中農業協同組合の比較」、「農業協同組合と農村発展転換」、「農村産業融合と農業協同組合の役割」の三つのセッションが設けられました。
最初のセッション「日中農業協同組合の比較」では中国側からは張暁山 CASS学部委員、日本側からは白石正彦 東京農業大学総合研究所農協研究部会会長が基調講演を行いました。張学部委員は農民専業合作社法改正に伴う問題点と解決法について、デンマークや中国の例を引きつつ議論をされました、白石会長は農村変革期における日本の総合農協の現況について、少子高齢化の進む日本の農村で農協が地域のライフラインの一部を担うなど総合農協が取り組んでいる例を挙げて紹介し、今後の方策について検討をされました。
第2セッションの「農業協同組合と農村の発展」では、日本側2名、中国側1名の専門家による講演が行われ、中国側からは任大鵬 中国農業大学教授が中国における農民合作社の立法と法改正について概要と今後解決されるべき問題点を指摘されました。日本側からは神田健策 弘前大学名誉教授が、日本の農村社会の変化と総合農協の自主改革について現状の説明と今後の展望を述べられました。また、多木誠一郎 小樽商科大学教授は2015年の農業組合法改正の概要と残された課題について説明し、今後の解決策について検討されました。
最後のセッション「農村産業融合と農業協同組合の役割」では、日本側4名、中国側2名の専門家にご講演をいただきました。中国側発表者の趙鉄橋 農業部農村合作経済経営管理ステーション副ステーション長が農村の産業化の発展と農村合作社の役割について講演され、孔祥智 中国人民大学教授は中国の農場の大規模経営化の可能性について、現状に基づいた提案をされました。日本側の発表者である米坂樹紀 農林中央金庫北京駐在員事務所長は日本の農業における6次産業化について、伊藤亮司 新潟大学准教授は新潟の事例を中心とした農業6次産業化と農協の対応について、長谷川晃生 農林中央金庫総合研究所主任研究員は農業経営体の6次産業化とそれにともなう農業金融の特徴と課題について講演されました。清水池義治 北海道大学准教授は日本の酪農業発展における農協の寄与と今後の展望について発表されました。
また、各セッションの質疑応答では、限られた時間の中、会場の参加者から質問や意見が出たほか、最後のフリーディスカッションでも今回のコーディネーターである曹斌 CASS農村発展研究所副主任の司会のもと、時間を超過するまで立て続けに質問が出るなど、熱い議論が交わされました。
JSPS北京研究連絡センターでは今後も日中研究者間の活発な研究交流の場として、CASSとの共催シンポジウムを継続、発展させていきたいと考えています。
☆プログラム
☆講演者リスト
講演者所属·氏名 |
講演タイトル |
セッションⅠ:日中農業協同組合の比較 |
中国社会科学院
張暁山 学部委員 |
農民専業合作社法の改正に伴う理論的な思考 |
東京農業大学総合研究所農業協同組合研究会
白石正彦 会長 |
農村変革期における日本の総合農協の現況、課題とICA原則重視の展望―日本と中国の農協の共通課題と異なる課題を踏まえてー |
セッションⅡ:農業協同組合と農村発展転換 |
中国農業大学人文·発展学院
任大鵬 教授 |
中国における合作社の立法及び改善 |
弘前大学
神田健策 名誉教授 |
日本における農村社会の変化と総合農協の自己改革の現状 |
小樽商科大学商学部
多木誠一郎 教授 |
農村社会の変化に対応した農業協同組合制度の改革と残された課題 |
セッションⅢ:農村産業融合と農業協同組合の役割 |
中国農業部農村合作経済経営管理センター
趙鉄橋 副センター長 |
農村産業化発展と農民合作社の役割 |
中国人民大学農業·農村発展学院
孔祥智 副院長 |
統括と分散を組み合わせた新たな形式と農業規模化経営の実現 |
農林中央金庫北京駐在員事務所
米坂樹紀 所長 |
日本における6次産業化の現状について |
新潟大学農学部
伊藤亮司 准教授 |
日本における農業六次産業化への農協の対応-主に新潟の事例を中心に- |
農林中金総合研究所
長谷川晃生 主任研究員 |
農業経営体の六次産業化と農業金融 |
北海道大学農学部
清水池義治 准教授 |
日本の酪農業の発展における農協の寄与 |
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