日本学術振興会(JSPS)は、昭和天皇の御下賜金をもとに1932年に創設された「財団法人日本学術振興会」を起源としています。それから90年以上の歴史を経たことになりますが、今日では研究者の自由な発想に基づく学術研究を支援する日本で唯一の資金配分機関(ファンディング・エージェンシー)として、学術研究の助成、研究者の養成、大学改革や大学のグローバル化の支援、そして学術に関する国際交流の促進など多岐にわたる事業を行っております。
中国とは、1979年に中国科学院と研究者交流を開始したのを皮切りに、半世紀近くに渡り日中間の研究者のモビリティーを高めるための様々な事業を展開してまいりました。その結果、今日ではJSPSの事業により支援された経験のある研究者は、中国全土に広がっております。これらの研究者は、JSPSの貴重な財産ともいえますし、日本と中国をつなぐかけがえのない存在であるともいえます。そういった個々の研究者が、JSPS中国同窓会を結成し、組織的、継続的に活動していることは意義深いことであり、当センターとしても密接に連携して日中間の研究者ネットワークの形成・維持・強化を図ってまいりたいと考えております。
また、今日多くの日本の大学が中国に拠点を設置しておりますが、北京研究連絡センターは、そういった大学の連絡会である「希平会」の事務局も勤めております。この希平会には、現在34の大学と1つの留学生組織、そしてそれらを支援する4つの政府系機関が参加しております。さらに、中国国内の大学や他の公的研究機関で研究に従事する在中の日本人研究者同士のネットワーク構築にも取り組んでおり、「在中国日本人研究者ネットワークさろん (Network Salon)」を開催し、情報交換のための場を提供しております。
日中両国の研究者の間には、知的・精神的連帯感が脈々と受け継がれてまいりました。今日、中国は世界でも屈指の科学技術大国として台頭しつつありますが、日本もコンスタントにノーベル賞受賞者を輩出するなど様々な分野で世界の第一線に立ち続けております。アカデミズムの世界はグローバルに開かれたものでありますが、とりわけ相互の信頼と尊敬により結ばれた日中の研究者の存在は、東アジアの研究者コミュニティーのみならず、人類全体の福祉にとっても大きな恩恵をもたらすものといえましょう。
JSPS北京研究連絡センターは、2025年6月に中関村エリアから朝陽区燕莎エリアに移転いたしました。私は、2003年から3年間に渡り当センター設立のために駐在しておりましたが、その後センターを今日の姿にまで発展させてきた歴代のセンター長のご尽力に改めて敬意を表すると共に、新たな場所でオフィスをオープンするにあたり、心機一転、日中学術交流の推進のために一層の力を尽くしてまいりたいと思いも新たにしているところです。どうか皆様からの変わらぬご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。 |