歴代センター長(2007~2011年  福西浩)

                          

日本学術振興会は日本の学術研究を支える最大のファンディング・エージェンシーとして、研究者の自発的・独創的な研究を支援する科学研究費補助金(科研費)事業、若手研究者の養成のための特別研究員事業をはじめ様々な事業を展開しています。また、世界の研究機関、研究者との国際的な学術交流と連携・共同を推進するために、海外に研究連絡センターを設置しています。この一つとして、JSPS北京研究連絡センターは2007年4月に10番目の海外センターとして開設されました。

現代中国には膨大な成長エネルギーが蓄積されており、学術・研究の面においても世界の中での存在感はますます大きくなっています。2011年3月に『中華人民共和国国民経済と社会発展第12次5ヵ年計画要綱』が批准されました。この中で、「戦略的に新興する産業」として、省エネ・環境保全、次世代情報技術、バイオ、先端装置製造、新エネルギー、新材料、新エネルギー自動車の7つの領域を指定して、産業と研究における新たな開拓を謳っています。この戦略的新興産業の開発に資する人材養成を目的に、多くの大学では新領域に関連した学科が創設されていますが、とくに注目される点は、新設された学科は海外の大学との協同によって運営するシステムの構築を計画していることです。また、『国家中長期教育改革と発展計画要綱(2010-2020年)』(2010年7月策定)の中で、北京大学や清華大学などに国家青年英才養成基地を設置して、優秀な学生を育成するための「選抜計画」を建てています。これらのプロジェクトからもわかるように、中国は、重点領域の研究の開発、および、若手研究者に対する国際的な教育システムの構築を、国家プロジェクトとして集中的に推進しています。

こうした中国のエネルギッシュな学術研究の展開と高等教育改革の中で、JSPS北京研究連絡センターは、研究者の自発的で独創的な研究を支援するという日本学術振興会の理念を実現し、中日学術交流事業の推進と日本の大学の中国での交流事業を支援するために多彩な活動を展開しています。その主なものは、①JSPSの国際交流プログラムの推進、②日中両国の大学・研究機関・学術振興機関の連携ネットワークの構築、③科学フォーラム、セミナー等の企画・開催、④日本の大学の国際化への協力・支援、⑤ホームページによる最新の日中学術交流情報の発信です。

日本及び中国、そして世界各国は、環境、エネルギー、食糧、資源、感染症などのグローバルな問題を解決し、経済・社会の持続可能な発展を目指しています。これらの問題に関連した日中共同研究が進展すれば、両国が目指す「持続可能な発展」がより現実的になっていくでしょう。そして、世界が抱える問題に対する日中共同研究の推進は、世界の先端研究をリードする役割を演じることになります。また、先端的共同研究の中で大学院の学生を含めた若手研究者の果たす役割はきわめて重要です。中日の若手研究者の交流の機会を格段に増やし、活躍の場を創り出す企画が緊急に必要になっています。JSPS北京研究連絡センターは、日中両国の大学、研究機関、学術振興機関の連携ネットワークを創り出すことによって、両国が現在必要としている共同研究と研究者・学生の交流を飛躍的に発展させていくプログラムを立案し、実施していこうとしています。

引き続き、皆様方のさらなるご支援とご協力を頂くよう、宜しくお願いを申しあげます。

日本学術振興会 北京研究連絡センター

センター長 福西 浩

 
  歴代センター長